会社から損害賠償請求されたら?退職代行の責任範囲

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佐藤みのり

佐藤みのり

長年、広告や人材分野で働いてきた経験から、「働き方の悩み」や「会社を辞めたいけど辞められない」といった声に数多く触れてきました。そんな中で注目したのが「退職代行」という新しい選択肢です。

自分一人ではなかなか踏み出せない第一歩を、安心して任せられるサービスがあることを知ってほしい。退職代行に関する情報はまだまだ知られていないことも多いので、利用者の立場に立って分かりやすく解説しようと思い、このサイトを運営しています。

新しいスタートを切りたい方の背中を、少しでもそっと押せる存在になれれば嬉しいです。

退職代行を利用して会社を辞めようとしたとき、上司から「勝手に辞めたら損害賠償を請求するぞ」と脅され、途方に暮れていませんか?

「たった数万円で訴えられるのか?」「本当に賠償金を払う義務があるのか?」
「退職代行は責任を取ってくれるのか?」

このような不安に駆られ、せっかく決心した退職をためらってしまう人は少なくありません。しかし、ご安心ください。その心配のほとんどは、法律に基づかない『不当な脅し』に過ぎません。

退職代行は、日本国憲法と民法が保障する「職業選択の自由」「退職の自由」を背景にした、合法的なサービスです。にもかかわらず、会社が「損害賠償」という言葉を使ってあなたを精神的に追い詰めるのは、単なる『退職させないための揺さぶり』なのです。

この記事は、あなたが抱えるそんな不安を完全に解消するために、弁護士の監修のもと、退職代行と損害賠償請求の関係を徹底的に解説します。

この記事を最後まで読めば、あなたは以下のことが分かります。

  • 退職代行で損害賠償請求される可能性が「ほぼゼロ」である法的根拠
  • 会社があなたを訴えることができるケースとできないケースの明確な違い
  • 「人手不足」「引き継ぎが不十分」など、不当な脅しへの正しい対処法
  • 万が一のトラブルに備え、依頼前に確認すべき3つのポイント
  • 弁護士と労働組合、どちらのサービスを選ぶべきかの判断基準

もう、会社の脅しに怯える必要はありません。退職は、あなたの人生を守るための正当な選択です。この記事が、あなたが不安から解放され、自信を持って新しい一歩を踏み出すための羅針盤となることを願っています。

さあ、一緒に不当なプレッシャーから解放され、心穏やかな未来を手に入れましょう。

      1. 佐藤みのり
  1. 【結論】退職代行で損害賠償される可能性はほぼゼロ!その法的根拠を解説
    1. 民法627条が保障する「退職の自由」とは
    2. 会社が損害賠償を請求できる法的要件
    3. 退職代行の利用は「債務不履行」にあたらない
  2. 退職時に損害賠償請求されるケースとは?弁護士が教える法的リスク
    1. 機密情報の持ち出し・漏洩
    2. 会社の備品や財産の横領・破壊
    3. 競業避止義務違反(同業他社への転職)
    4. 重大な過失による損害発生
  3. 【事例別】退職代行で訴えられても心配ない!会社からの不当な「脅し」
    1. 「無断欠勤で会社に損害が出た」と主張されるケース
    2. 「人手不足で業務が回らない」と主張されるケース
    3. 「引き継ぎが不十分だ」と主張されるケース
  4. 退職代行で損害賠償トラブルを確実に回避する3つの方法
    1. ①弁護士または労働組合運営の退職代行を選ぶ
    2. ②会社からの連絡には絶対に自分で対応しない
    3. ③退職代行業者とトラブル時の対応について確認する
  5. 退職代行サービスの責任範囲を徹底解説|どこまで任せられる?
    1. 民間企業の責任範囲と限界
    2. 労働組合の責任範囲と団体交渉権
    3. 弁護士の責任範囲と法的交渉権
  6. 【比較】弁護士 vs 労働組合!損害賠償リスクがある場合の選び方
    1. 費用と交渉範囲の比較:弁護士は高額だが法的請求が可能
      1. 費用面での比較
    2. 対応できるトラブル範囲の比較
      1. パワハラ・セクハラに対する慰謝料請求
      2. 未払い賃金・残業代の請求
    3. あなたの状況別:最適なサービス診断チャート
  7. 万が一、損害賠償請求されたら?退職代行業者との連携と対処法
    1. STEP1:請求書や通知が届いたらすぐに代行業者に連絡
    2. STEP2:弁護士に依頼する場合の具体的な流れ
      1. 【ケースA】弁護士運営の退職代行を利用している場合
      2. 【ケースB】労働組合・民間業者を利用している場合
    3. 追加費用発生の有無と事前に確認すべきこと
  8. よくある質問(FAQ)
    1. 退職代行を利用すると、会社から損害賠償請求されるリスクはありますか?
    2. 退職代行を利用して会社を辞めたら、会社から訴えられませんか?
    3. 退職時に損害賠償を請求されるケースはどのようなものですか?
    4. 退職代行で円満退職は可能ですか?
  9. まとめ

【結論】退職代行で損害賠償される可能性はほぼゼロ!その法的根拠を解説

退職代行の利用を検討するにあたり、最も大きな不安は「損害賠償を請求されるのでは?」という点でしょう。結論からお伝えすると、退職代行を利用したことのみを理由に損害賠償請求される可能性は、限りなくゼロに近いと言えます。これは、感情論ではなく、日本の法律が明確に定めている労働者の権利に基づくものです。

このセクションでは、なぜ会社があなたを訴えることが難しいのか、その法的根拠を分かりやすく解説します。法律に詳しくない方でも理解できるよう、専門用語を避け、具体的な条文を引用しながらご説明しますので、ぜひご安心ください。

民法627条が保障する「退職の自由」とは

会社員(期間の定めのない雇用契約を結んでいる正社員や契約社員)には、いつでも会社を辞める自由が法的に保障されています。この退職の自由を規定しているのが、日本の民法第627条です。

民法第627条第1項
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

この条文が意味することは、非常にシンプルかつ強力です。つまり、あなたが会社に「辞めます」と伝えた日から2週間が経過すれば、会社がどんなに反対しようと、雇用契約は自動的に終了するということです。会社側が「人手不足だからダメだ」「就業規則で1ヶ月前の申告が必要だから認めない」などと主張しても、法律上の効力はありません。退職は、あなたの意思表示のみで成立する「一方的な権利」なのです。

退職代行サービスは、あなたのこの「退職の意思表示」を会社に伝える役割を担っています。会社から「代行サービスを使ったら無断欠勤で損害が出た」と主張されるケースがありますが、これも法的な根拠は薄いです。なぜなら、あなたが退職の意思を代行サービスを通じて会社に伝えた時点で、民法627条の適用が開始されるからです。つまり、あなたは「無断欠勤」をしているのではなく、法的に認められた手続きに従って退職を待っている状態と見なされます。

会社が損害賠償を請求できる法的要件

では、会社はどのような場合に、労働者に対して損害賠償を請求できるのでしょうか。会社が損害賠償請求を行うには、民法第709条に基づく要件を満たす必要があります。

民法第709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

この条文に基づき、会社が損害賠償請求を裁判で認めさせるには、以下の4つの要件をすべて満たさなければなりません。

  1. 故意または過失があること:労働者が意図的に、あるいは不注意によって損害を与えたこと。
  2. 損害が発生したこと:会社に金銭的な損害(損失)が実際に発生したこと。
  3. 権利の侵害があること:会社の権利や利益が侵害されたこと。
  4. 因果関係があること:労働者の行為と会社の損害の間に、直接的な原因と結果の関係があること。

単純に退職代行を使って辞めただけでは、これらの要件を満たすことはできません。退職代行の利用は、労働者の正当な権利行使であり、会社に損害を与える「不法行為」にはあたらないからです。また、たとえ損害が発生したとしても、それがあなたの退職によって直接的に引き起こされたものであると立証することは、会社側にとって非常に困難です。例えば、「あなたの退職で人手不足になり、売上が下がった」と会社が主張しても、それはあなたの退職以外の要因(景気、他の社員の退職、営業戦略の失敗など)が複雑に絡み合っているため、退職と損害の間に直接的な因果関係があると証明することはほぼ不可能です。

このように、法的な観点から見ると、会社が労働者に対して損害賠償請求を行うハードルは極めて高いのです。ほとんどの会社もこの事実を知っているため、実際に訴訟に踏み切ることはありません。

退職代行の利用は「債務不履行」にあたらない

会社によっては、退職代行を利用して辞めることを「債務不履行(さいむふりこう)」だと主張してくることがあります。債務不履行とは、契約で定められた義務を果たさないことです。会社側は、「労働契約に基づき、あなたはきちんと引き継ぎをしたり、退職日までに業務を遂行する義務があったのに、それを果たさなかった」と主張してくるかもしれません。

しかし、この主張も法的には成立しません。なぜなら、退職代行を利用することは、退職の意思表示という正当な権利の行使だからです。退職の意思を伝えた時点で、雇用契約は解除に向かっているため、そもそも「就業義務」という債務は消滅する方向に向かいます。確かに、会社の就業規則には「退職の際は○ヶ月前に申し出ること」や「引き継ぎを行うこと」といった義務が定められていることが多いでしょう。しかし、民法は会社の就業規則よりも上位の法律であり、就業規則が民法に反する内容は無効となります。

また、民法第627条には「退職の申し入れから2週間」と定められていますが、これはあくまで「退職日を確定するための期間」であり、2週間分の有給休暇が残っていれば、その期間を消化することで実質的な「即日退職」も可能です。有給休暇は労働者が自由に取得できる権利であり、会社がこれを拒否することはできません。

このように、退職代行を利用すること自体が債務不履行にあたることはなく、会社が「契約違反だ」と主張しても、法的な効力はないのです。不安に感じる必要は一切ありません。

退職時に損害賠償請求されるケースとは?弁護士が教える法的リスク

前述の通り、退職代行を利用したこと自体で損害賠償を請求される可能性は極めて低いと言えます。しかし、これは「いかなる状況でも絶対に訴えられない」という意味ではありません。退職時や在職中のあなたの行動によっては、会社が法的な手段に訴え、実際に損害賠償が認められるケースもごく稀に存在します。このセクションでは、退職代行の利用とは関係なく、労働者が会社から損害賠償請求を受ける可能性のある具体的な事例を、法的観点から詳しく見ていきましょう。自身の状況と照らし合わせ、不必要なリスクを避けるための参考にしてください。

機密情報の持ち出し・漏洩

最も危険なリスクの一つが、会社の機密情報や個人情報を不正に持ち出したり、外部に漏洩させたりする行為です。これは、単なる会社への背信行為にとどまらず、不正競争防止法や個人情報保護法といった法律違反にあたる可能性があり、退職後であっても損害賠償請求の対象となり得ます。

例えば、以下のような行為が該当します。

  • 顧客リスト、取引先の情報、営業ノウハウをUSBメモリやクラウドサービスにコピーして持ち出す
  • 新製品の開発情報、技術データ、レシピなどを退職先の会社に提供する
  • 会社の内部情報(人事情報、財務データなど)をSNSやブログに書き込む

たとえ「個人的なメモとして持ち出しただけ」「転職先で少し参考にしようと思っただけ」と考えていても、会社がその行為によって具体的な損害(顧客の流出、ブランドイメージの低下など)を立証できれば、高額な賠償金の支払いを命じられるリスクがあります。特に、技術職や営業職など、機密情報に触れる機会が多い職種の方は細心の注意が必要です。

会社の備品や財産の横領・破壊

会社から支給されたパソコン、携帯電話、社用車、工具などを故意に持ち去ったり、破損させたりする行為も、損害賠償の対象となります。これは刑法上の「業務上横領罪」「器物損壊罪」に問われる可能性もある重大な行為です。

退職代行を利用する場合、通常は会社からの貸与物を郵送で返却することが一般的です。しかし、会社との連絡を一切絶ち、返却手続きを怠ることは、備品を横領したとみなされるリスクを伴います。特に、高額な備品や、社用車のような会社の事業に不可欠なものを返却しない場合は、会社から内容証明郵便などで正式な返却を求められ、それでも応じない場合は法的措置を取られる可能性があります。

退職代行を利用する際は、必ず貸与物の返却方法について代行業者と事前に確認し、指示に従って速やかに返送することが重要です。

競業避止義務違反(同業他社への転職)

退職後に同業他社へ転職する際、「競業避止義務(きょうぎょうひしぎむ)」に違反したとして損害賠償請求されるケースも存在します。

競業避止義務とは、労働者が退職後、一定期間、競合する企業への就職や、自分で同様の事業を立ち上げることを制限するルールです。これは、会社の営業秘密やノウハウを守るために、就業規則や個別の労働契約書で定められていることがあります。

ただし、この義務には以下のような厳しい要件があり、簡単に認められるものではありません。

  • 制限の範囲が合理的であること:期間、地域、職種の範囲が過度に広くないか(例:期間は2年以内、地域は限定的であるか)
  • 対価の有無:義務の対価として、退職金の上乗せや手当の支給などがあったか
  • 保護すべき企業の利益があること:単なる嫌がらせではなく、守るべき企業秘密やノウハウが具体的に存在するか

これらの要件を満たさない場合、競業避止義務の規定は無効とされるケースがほとんどです。しかし、あなたが在職中に顧客を意図的に引き抜いたり、会社の技術を不正に流用したりした場合は、競業避止義務違反として訴えられるリスクが高まります。転職先が決まっている場合は、退職代行業者(特に弁護士)に相談し、リスクがないか事前に確認しておくことを強くお勧めします。

重大な過失による損害発生

労働者が「故意」または「重大な過失」によって会社に損害を与えた場合も、損害賠償請求の対象となります。

「重大な過失」とは、少し注意すれば簡単に防げたはずの損害を、あえて怠ったことによって発生させた場合を指します。例えば、以下のようなケースが考えられます。

  • 高額な備品・機材の破損:操作マニュアルを無視し、無茶な使い方をした結果、高額な機材を壊してしまった。
  • 業務上のミスによる大損害:発注書の金額を意図的に偽って記入し、会社に数百万の損失を出させた。
  • 車両事故:飲酒運転や無免許運転で会社の車を大破させた。

一方で、単純なミスや業務上の不注意(軽過失)であれば、通常は損害賠償請求されることはありません。これは、労働者が日常業務でミスを犯すことは不可避であり、そのリスクは雇用主である会社側が負うべきものだと考えられているからです。会社が労働者に請求できる賠償額は、労働者の過失の程度や立場、業務内容などを総合的に考慮して大幅に減額されることが一般的です。たとえば、数百万円の損害が出たとしても、労働者に請求されるのはその一部に過ぎないことがほとんどです。

退職代行を利用する際は、会社から「退職代行を利用したことによる業務上の混乱で損害が出た」と主張されるケースがありますが、これも単純な「退職」という行為が、直ちに「重大な過失」と認められることはありません。会社側が「損害」と主張するものが、あなたの退職によって引き起こされたものだと証明することは極めて困難なのです。

【事例別】退職代行で訴えられても心配ない!会社からの不当な「脅し」

退職代行を利用する際に、会社から「無断で辞めたら損害賠償を請求するぞ」「引き継ぎが不十分で損害が出た」と脅されるケースは少なくありません。しかし、これらの言葉のほとんどは、あなたが退職を思いとどまるように仕向けるための不当な「揺さぶり」に過ぎません。法律の知識があれば、こうした脅しは全く怖くありません。

このセクションでは、会社がよく使う不当な脅し文句を具体例として挙げ、なぜそれが法的に成立しないのかを分かりやすく解説します。事前にこれらの知識を身につけておくことで、会社からのプレッシャーに冷静に対応できるようになります。

「無断欠勤で会社に損害が出た」と主張されるケース

退職代行を利用すると、会社に出勤せずに退職手続きが進むため、会社側は「無断欠勤」だと主張してくることがあります。そして、「無断欠勤のせいで業務が止まり、会社に損害が出た」として、その損害分の賠償を請求すると脅してくるのです。

しかし、これは完全に間違いです。前述の通り、あなたは退職代行業者を通じて会社に「退職の意思」を伝えています。この時点で、あなたは民法627条に基づく退職の申し入れを正式に行っていることになります。つまり、あなたは「無断欠勤」をしているのではなく、「会社に籍は置いているが、出勤する義務がない状態」にあるのです。具体的には、有給休暇が残っていればその期間を消化し、有給がなくても退職の意思表示から2週間は「退職待ち」の期間と見なされます。この期間中は、労働契約に基づく就労義務は事実上なくなります。

したがって、「無断欠勤」という会社側の主張は法的に成立しません。また、無断欠勤を理由に損害賠償が認められるのは、あなたが会社の事業に不可欠な役割を担っており、あなたの欠勤によって会社が直接的かつ具体的な損害を被ったと証明できる場合に限られます。一般的な社員が1人退職しただけで、会社全体に損害が出ることは極めて稀であり、裁判で証明することは不可能に近いでしょう。

知っておきたい豆知識:
もし会社から「無断欠勤だ」と言われたら、退職代行業者を通じて「〇月〇日付で退職の意思表示を行い、民法627条に基づき退職手続きを進めている」旨を毅然と伝えてもらいましょう。この一言で、会社はそれ以上強く出ることが難しくなります。

「人手不足で業務が回らない」と主張されるケース

「君が突然辞めたせいで、プロジェクトが頓挫した」「後任が見つからないから辞めさせられない」といった言葉で、退職を引き止めようとするケースです。こうした主張に対し、「君の退職で生じた損害は賠償してもらう」と脅されることもあります。

しかし、これも法的には無効な脅しです。なぜなら、人員配置や業務の引き継ぎ体制を整えるのは、会社側の責任だからです。労働者の退職によって業務が滞るリスクは、企業が負うべき経営上のリスクであり、それを労働者個人の責任に転嫁することはできません。もし、あなたが退職するだけで会社が事業を継続できなくなるのであれば、それは会社の経営体制に問題がある、という結論にしかなりません。

この種の主張は、あなたの罪悪感に訴えかける心理的な揺さぶりです。退職代行サービスを利用すれば、こうした感情的なやり取りを一切避けることができます。業者が冷静に「〇月〇日付での退職希望」を伝えるだけで、会社側は法的な手続きを進めるしかなくなるのです。

「引き継ぎが不十分だ」と主張されるケース

「引き継ぎをせず勝手に辞めたから、会社に大損害が出た」と主張し、損害賠償をちらつかせるパターンです。特に、退職代行を利用して即日退職する場合に、よく使われる言葉です。

確かに、社会人として引き継ぎを行うことはマナーであり、円満退職には欠かせない要素です。しかし、会社側が「引き継ぎが不十分だった」と主張し、それを理由に損害賠償を請求することは、法的に極めて困難です。

その理由は以下の通りです。

  1. 引き継ぎは義務ではない:労働契約上、引き継ぎを行う義務が明文化されているケースは稀です。ほとんどの会社では、就業規則に「引き継ぎを円滑に行うよう努力すること」といった抽象的な表現が使われているに過ぎません。この努力義務違反で損害賠償が認められることはまずありません。
  2. 損害額の立証が困難:「引き継ぎが不十分」という事実と「会社に発生した損害」との間に、直接的な因果関係を証明することは、会社にとって至難の業です。例えば、「引き継ぎがなかったせいでA案件の契約を失った」と会社が主張しても、それはあなたの退職が原因ではなく、会社の営業努力不足や、後任者の能力不足など、様々な要因が考えられます。
  3. 会社側の管理責任:引き継ぎがスムーズにいかないリスクも、会社側が事前に想定し、対策を講じるべきリスクです。例えば、業務マニュアルの作成、情報共有ツールの導入、複数人での担当制などは、会社が負うべき管理責任です。それを怠った会社の責任を、労働者に転嫁することはできません。

退職代行を利用する際は、引き継ぎ資料をデータで共有したり、担当者への連絡先を伝えたりするなどの「できる限りの努力」を代行業者に依頼すれば十分です。それ以上の責任は問われません。会社がどれだけ「不十分だ」と主張しても、法的な根拠は薄いのです。

退職代行で損害賠償トラブルを確実に回避する3つの方法

ここまでの解説で、「退職代行の利用が直接的な原因で損害賠償を請求されることはほとんどない」ということがご理解いただけたかと思います。しかし、万が一の事態に備え、そして何よりも安心して退職手続きを進めるために、依頼者側が事前に講じておくべき対策がいくつかあります。

このセクションでは、損害賠償をはじめとするあらゆるトラブルを未然に防ぎ、スムーズに退職を成功させるための実践的な方法を3つご紹介します。これらを実践するだけで、あなたの安心感は格段に高まるでしょう。

①弁護士または労働組合運営の退職代行を選ぶ

退職代行サービスには、主に「弁護士」「労働組合」「民間企業」の3つの運営元があります。このうち、損害賠償などの法的なトラブルリスクに備える上で、最も安心できるのは「弁護士」または「労働組合」が運営するサービスです。

民間企業が運営する退職代行サービスは、退職の意思を会社に「伝える」ことしかできません。これは、弁護士法72条で定められた「非弁行為(ひべんこうい)」に抵触する可能性があるためです。非弁行為とは、弁護士ではない者が報酬を得て法律事務を行うことで、違法とされています。具体的には、会社から「引き継ぎはどうするのか」「損害賠償を請求する」といった交渉を求められた場合、民間業者は一切対応できず、あなた自身が直接会社と交渉しなければならなくなる可能性があります。この時点で、退職代行を依頼した意味が半減してしまうのです。

一方、弁護士は法律の専門家ですから、依頼者からの一切の交渉を代行できます。労働組合も労働組合法に基づき、労働者の退職に関する「交渉」を行うことができます。したがって、会社から損害賠償を請求されたり、不当な引き止めに遭ったりした場合でも、あなたに代わって法的な根拠をもって会社と交渉してくれるため、トラブルに発展する可能性を大幅に減らすことができます。

費用は民間業者よりもやや高くなりますが、その安心感は計り知れません。特に、以下のような状況に当てはまる場合は、最初から弁護士または労働組合運営の退職代行を選ぶべきです。

  • 会社からすでにパワハラやセクハラを受けている
  • 未払いの残業代や給与がある
  • 有給休暇の消化を拒否されている
  • 損害賠償を請求される可能性がある(高額な備品破損、情報漏洩など)

後から弁護士に依頼し直す手間や費用を考えると、最初から専門家を選ぶことが最も賢明な選択と言えます。

②会社からの連絡には絶対に自分で対応しない

退職代行を依頼したにもかかわらず、会社からあなた個人の携帯電話やメールアドレスに直接連絡が来るケースがあります。「話だけでも聞いてくれ」「このままでは損害賠償するぞ」といった脅し文句で、退職代行業者を通さずに直接接触を図ってくるのです。

このような連絡が来ても、絶対に自分自身で対応してはいけません。会社はあなたの不安を煽り、代行サービスを無効化させようと試みているだけです。あなたが一度でも応じてしまうと、会社は「直接話せるのだから代行は不要だ」と判断し、交渉が振り出しに戻ってしまいます。

会社から直接連絡が来た場合は、以下の対応を徹底してください。

  1. 電話には出ない:着信履歴が残っていても無視してください。
  2. メッセージは無視:LINEやメール、SMSが届いても返信は一切しない。
  3. 代行業者に報告:会社から連絡があったことを、すぐに代行業者に報告しましょう。

代行業者は、あなたへの直接連絡をやめるよう、会社に改めて忠告してくれます。この一連の対応を徹底することで、会社はあなたと直接交渉するのを諦め、代行業者を窓口として正式な手続きに入らざるを得なくなります。退職代行を依頼したその日から、会社との連絡を断つ勇気が非常に重要です。

③退職代行業者とトラブル時の対応について確認する

サービスを申し込む前に、万が一トラブルが発生した場合の対応について、業者に具体的に確認しておくことも非常に重要です。特に、損害賠償のリスクがある場合は、以下の点を明確にしておきましょう。

  • 追加費用は発生するか:会社から法的な要求があった場合、追加料金を請求されるのか。料金体系を事前に詳しく確認しておきましょう。
  • 専門家への引継ぎ体制は?:もし弁護士への相談が必要になった場合、スムーズに引き継ぎを行ってくれるのか。提携弁護士の有無や、紹介サービスがあるかなどを確認しましょう。
  • どこまで対応してくれるか:「交渉」や「団体交渉」の範囲を具体的に聞いておきましょう。未払い賃金や退職金、有給休暇の交渉にも対応してくれるかを確認しておくことで、後々のトラブルを防げます。

これらの質問に明確に答えられなかったり、曖昧な返答をしたりする業者は避けるべきです。特に、民間業者の中には、トラブル時の対応を明確にせず、依頼後に「当社のサービス範囲外です」と告げるケースもあります。安心して退職代行を利用するためには、事前にリスクを洗い出し、そのリスクに備える体制が整っている業者を選ぶことが不可欠です。

退職代行サービスの責任範囲を徹底解説|どこまで任せられる?

退職代行サービスの利用を検討する際、最も重要なのが「どの業者が、どこまでやってくれるのか」を正確に理解することです。前述した通り、退職代行は運営元によって「できること」と「できないこと」が明確に分かれています。この違いを把握しておかないと、いざというときに思わぬトラブルに巻き込まれたり、会社の不当な要求を跳ね返せなくなったりするリスクがあります。ここでは、各運営元の責任範囲と限界について、専門的な視点から徹底的に解説します。

民間企業の責任範囲と限界

退職代行業界で最も多くの割合を占めているのが、弁護士資格を持たない民間企業が運営するサービスです。費用が比較的安価で、LINEやメールで手軽に相談できる点が魅力ですが、対応範囲には厳格な法的限界があります。

民間企業ができるのは、あくまで「退職の意思を会社に伝えること」と、それに伴う事務的な連絡(退職届の送付先確認、貸与物の返却方法など)の「伝達代行」のみです。これは、弁護士法72条で定められた「非弁行為(弁護士ではない者が、報酬を得て法律事務を行うこと)」に抵触しないための限界です。非弁行為は、2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられる違法行為です。

そのため、会社側から以下のような「交渉」や「法的判断」を要するやり取りが発生した場合、民間業者は一切対応することができません。

  • 未払い賃金や残業代の請求:「〇月分の給与が未払いなので、支払いを求めてほしい」といった交渉。
  • 有給休暇の消化交渉:「残っている有給をすべて使いたい」といった交渉。
  • 退職条件の変更交渉:「退職日を〇月〇日にしてほしい」といった交渉。
  • 損害賠償請求への反論:会社から損害賠償を請求された際、「その請求は法的に根拠がない」と反論する行為。

こうした交渉や法的なやり取りが発生した場合、民間業者は「当社のサービス範囲外です」と告げ、あなた自身で直接会社と交渉するか、弁護士に相談するよう促すしかありません。つまり、会社の脅しに屈することなく、あなた自身の力で対応する必要が出てくるのです。この点が、民間企業の退職代行を利用する上で最も大きなリスクとなります。

労働組合の責任範囲と団体交渉権

労働組合が運営する退職代行サービスは、民間企業とは異なり、「団体交渉権」という強力な法的権限を持っています。これは、憲法で保障された労働者の権利であり、労働組合法によって保護されています。団体交渉権とは、労働者の労働条件や労働関係に関する事項について、使用者(会社)と交渉する権限のことです。

これにより、労働組合運営の退職代行は、あなたに代わって会社と以下のような交渉を行うことができます。

  • 未払い賃金・残業代の支払い交渉:未払い額の計算や、支払い期日の設定を会社と交渉します。
  • 有給休暇の消化交渉:退職日までに残っている有給休暇をすべて消化できるよう、会社と交渉します。
  • 退職条件の交渉:退職日や、退職金の有無など、あなたにとって有利な条件を会社と交渉します。
  • 会社からの不当な要求への対応:「損害賠償を請求する」といった脅しに対し、法的な根拠を示して反論します。

労働組合が交渉を申し入れた場合、会社は正当な理由なく交渉を拒否することはできません。拒否した場合は「不当労働行為」と見なされ、法的な罰則の対象となる可能性があります。この法的強制力が、労働組合の最大の強みであり、交渉が難航しそうなケースでも安心して任せられる理由です。

ただし、労働組合はあくまで「交渉」の専門家です。会社が交渉に応じず、裁判などの法的手続きに進んだ場合は、労働組合は対応できません。その場合は、改めて弁護士に依頼し、法的措置を取る必要があります。また、団体交渉権は「労働者」の権利であるため、個人事業主やフリーランスからの退職代行は原則として受け付けていません。

弁護士の責任範囲と法的交渉権

退職代行サービスの最高峰と言えるのが、弁護士が運営するサービスです。弁護士は法律の専門家であり、依頼者の代理人として、あらゆる法律事務を代行する権限を持っています。これは、弁護士法によって明確に認められた権利です。

弁護士は、退職の意思伝達はもちろん、労働組合が対応できる交渉のすべてに加え、以下のような法的な手続きも一貫して代行できます。

  • 内容証明郵便の送付:会社が退職届の受理を拒否する場合などに、退職の意思を証拠として残すための書面を送付します。
  • 損害賠償請求への法的な反論:会社から損害賠償を請求された場合、その法的根拠を精査し、裁判を見据えた本格的な交渉や反論を行います。
  • 裁判の代理人:会社との交渉が決裂し、労働審判や民事訴訟に発展した場合、あなたの代理人として出廷し、法廷で会社と争います。
  • 未払い賃金や退職金の法的請求:交渉で会社が支払いに応じない場合、法的手段を用いて強制的に支払いを請求できます。

弁護士に依頼すれば、会社がどのような強硬な態度をとってきても、あなたは一切対応する必要がありません。すべての窓口が弁護士に一本化されるため、精神的な負担を最小限に抑え、確実に退職を完了させることができます。その分、費用は他の業者よりも高額になる傾向にありますが、その安心感と対応範囲の広さは、他の業者とは比較になりません。

運営元退職の意思伝達会社との交渉法的トラブル対応費用相場
民間企業〇(伝達のみ)×(非弁行為)×(非弁行為)2.5万〜3.5万円
労働組合〇(交渉可)〇(団体交渉権)△(裁判は不可)3万〜4万円
弁護士〇(交渉可)〇(代理交渉)〇(法的対応可)5万〜10万円

【比較】弁護士 vs 労働組合!損害賠償リスクがある場合の選び方

前のセクションで、退職代行の運営元によってサービス範囲が大きく異なることをご理解いただけたかと思います。特に、会社から損害賠償をちらつかされている、あるいはパワハラや未払い賃金などの法的なトラブルがすでに発生している場合、ただ退職を伝えるだけの民間業者では対応しきれない可能性が高いでしょう。このような状況で、あなたの権利を確実に守り、安全に退職を完了させるためには、「弁護士」「労働組合」のどちらかを選ぶことになります。

このセクションでは、両者のサービスを「費用」「交渉範囲」「トラブル対応」の観点から徹底的に比較します。それぞれのメリット・デメリットを理解し、あなたの状況に最適なサービスを選ぶための明確な指針を示します。

費用と交渉範囲の比較:弁護士は高額だが法的請求が可能

弁護士と労働組合は、どちらも退職に関する交渉を依頼者に代わって行えるという共通点を持っています。しかし、その根拠となる法律が異なるため、対応できる範囲と費用に大きな違いがあります。

費用面での比較

  • 弁護士:費用は5万〜10万円程度と高額になる傾向があります。これは、弁護士が法律の専門家として、すべての法律事務を代行する権限と責任を持つためです。特に、未払い賃金や残業代の請求、あるいは損害賠償請求への対応など、交渉が複雑化するほど費用は増す可能性があります。ただし、依頼内容によっては着手金と成功報酬制を採用している事務所もあります。
  • 労働組合:費用は3万〜4万円程度と比較的安価です。これは、団体交渉権を行使する目的が「労働者の権利を保護すること」であり、営利目的ではないためです。多くの組合が、組合費として月額数千円を支払うことでサービスを利用できる仕組みになっています。

費用の面だけを見れば労働組合の方が優位に見えますが、弁護士には「法的請求」が可能という大きな強みがあります。労働組合は交渉のプロですが、会社が支払いを拒否した場合、法的手段に訴えることはできません。一方、弁護士は交渉が決裂した場合でも、そのまま訴訟などの法的手段に移行し、強制的に金銭を回収することが可能です。この「交渉」から「法的請求」まで一貫して任せられる点が、弁護士の最大のメリットであり、高額な費用を払う価値がある理由です。

対応できるトラブル範囲の比較

退職時に発生するトラブルは、退職の意思伝達だけではありません。ここでは、退職代行の利用と併せて起こりうる代表的なトラブルについて、弁護士と労働組合の対応範囲を比較します。

パワハラ・セクハラに対する慰謝料請求

  • 弁護士:依頼者の代理人として、会社や加害者に対し、慰謝料の支払いを求める交渉や法的な請求が可能です。交渉で解決できない場合は、労働審判や裁判を通じて解決を図ります。
  • 労働組合:会社に対して、パワハラやセクハラの実態調査、加害者への懲戒処分、再発防止策の策定などを求める交渉が可能です。しかし、慰謝料という「金銭的な請求」は個人の法的な権利にあたるため、直接的な交渉や裁判の代理はできません。

未払い賃金・残業代の請求

  • 弁護士:未払い額を正確に計算し、会社に内容証明郵便を送付したり、法的な根拠をもって支払いを交渉したりできます。会社が応じない場合は、少額訴訟や労働審判を起こし、強制的に回収できます。
  • 労働組合:団体交渉権に基づき、未払い分の支払いを会社に交渉できます。交渉で解決できるケースも多いですが、会社が支払いを拒否した場合、労働組合から法的な強制力をもって請求することはできません。

このように、金銭的なトラブルや法的な請求を伴う問題に対しては、弁護士が圧倒的に有利です。労働組合は交渉で会社を動かすことはできますが、最終的な解決手段である法的措置は弁護士にしか任せられません。

あなたの状況別:最適なサービス診断チャート

ここまで解説した内容を踏まえ、あなたの状況に最適な退職代行サービスを診断してみましょう。以下のチャートを参考に、あなたの抱えるリスクに最も適した選択肢を見つけてください。

退職代行サービス診断チャート

  1. 質問1:会社からすでに「損害賠償請求する」と言われていますか?

    • YES → 質問2へ
    • NO → 質問3へ
  2. 質問2:会社から以下のような金銭的なトラブルが発生していますか?

    • 未払い賃金・残業代がある
    • 高額な退職金の請求がある
    • パワハラやセクハラに対する慰謝料請求を検討している
    • YES弁護士運営の退職代行が最適です。
      法的請求が必要な事案であり、すべての手続きを安心して任せられます。
    • NO労働組合運営の退職代行が最適です。
      損害賠償の脅しは不当なケースがほとんどであり、交渉権を持つ労働組合で十分に対応できます。費用も抑えられます。
  3. 質問3:会社から金銭的な請求や法的なトラブルのリスクはありますか?

    • 高額な備品を壊してしまった、機密情報を持ち出してしまったなど、法的リスクを認識している。
    • YES弁護士運営の退職代行が最適です。
      万が一の事態に備え、最初から法的対応が可能な弁護士に依頼しておくべきです。
    • NO民間企業または労働組合運営の退職代行が最適です。
      単に退職の意思を伝えるだけであれば、費用を抑えられる民間業者でも十分です。パワハラや未払いなどの交渉が必要なら労働組合を検討しましょう。

このチャートはあくまで目安です。最終的には、各サービスの詳細を比較検討し、あなた自身の判断で最適な業者を選んでください。しかし、少しでも「もしかしたらトラブルになるかも」と感じる場合は、労働組合か弁護士の退職代行を選ぶことが、結果として最も安全で費用対効果の高い選択となるでしょう。

万が一、損害賠償請求されたら?退職代行業者との連携と対処法

ここまでの解説で、「退職代行を利用したことだけでは損害賠償請求されることはない」ということが分かり、安心された方も多いのではないでしょうか。しかし、ごく稀なケースとして、会社が不当な損害賠償請求に踏み切ったり、実際に法的な訴えを起こしてくる可能性もゼロではありません。もし、あなたの元に、会社からの損害賠償請求書や、弁護士からの通知が届いた場合、パニックにならずに冷静に対処することが何よりも重要です。

このセクションでは、最悪の事態が発生した場合に、あなたが取るべき具体的な行動手順をステップ形式で解説します。慌てることなく、正しい対応を取ることで、事態の悪化を防ぎ、トラブルを速やかに解決に導くことができます。

STEP1:請求書や通知が届いたらすぐに代行業者に連絡

会社からの損害賠償請求は、多くの場合、最初は口頭での脅しや、会社独自の書面で行われます。しかし、稀に「内容証明郵便」「訴状」といった、法的な意味を持つ文書が自宅に届くことがあります。

これらの書類が届いたら、絶対に自分だけで判断せず、すぐに退職代行業者に連絡してください。これが最も重要な最初のステップです。書類の内容を業者に正確に伝え、指示を仰ぎましょう。

なぜすぐに連絡する必要があるのでしょうか?

  1. 法的文書のタイムリミット:訴状などの法的文書には、「〇日以内に裁判所へ出廷すること」「〇日以内に答弁書を提出すること」といった期限が明記されていることがほとんどです。この期限を過ぎてしまうと、会社側の主張がすべて認められ、一方的に敗訴してしまうリスクがあります。退職代行業者は、このような法的手続きの重要性を理解しているため、迅速な対応を促してくれます。
  2. 非弁行為の回避:もしあなたが民間企業の退職代行を利用していた場合、会社からの請求書に対して自分で回答しようとすると、かえって事態を悪化させる可能性があります。不用意な発言や、交渉の場に出てしまうことで、会社に付け入る隙を与えてしまうからです。プロに任せることで、冷静かつ論理的な対応が可能になります。
  3. 弁護士への円滑な連携:労働組合や民間業者が運営する退職代行は、法的な裁判の代理人にはなれません。しかし、提携している弁護士事務所がある場合、これまでの経緯や会社側の主張内容を正確に伝え、スムーズな引き継ぎをサポートしてくれます。

とにかく、会社からの文書が届いたら、「封を開けずに代行業者に相談する」くらいの心構えでいるのが最も安全です。

STEP2:弁護士に依頼する場合の具体的な流れ

会社が本気で損害賠償請求に踏み切った場合、最終的な解決手段は弁護士による法的な対応になります。ここでは、弁護士に依頼する場合の具体的な流れを解説します。

このステップは、あなたがすでに弁護士運営の退職代行を利用しているか、または労働組合や民間業者を利用していて、新たに弁護士に依頼する場合で異なります。

【ケースA】弁護士運営の退職代行を利用している場合

  1. 担当弁護士への相談:届いた書類の内容を担当弁護士にすべて伝えます。弁護士は法的観点から請求内容を精査し、会社側の主張に根拠があるかどうかを判断します。
  2. 会社への法的な通知:弁護士が会社の代理人として、損害賠償請求の不当性を主張する「内容証明郵便」を送付します。この時点で、会社は本気で訴訟に踏み切るか、それとも請求を取り下げるかを真剣に検討せざるを得なくなります。
  3. 和解交渉または裁判:会社が請求を取り下げれば問題は解決です。もし会社が応じない場合は、弁護士があなたに代わって「和解交渉」を進めます。それでも解決に至らない場合は、「労働審判」「民事訴訟」に移行し、裁判所で争うことになります。すべての手続きは弁護士が代理で行うため、あなたは精神的な負担から解放されます。

【ケースB】労働組合・民間業者を利用している場合

  1. 退職代行業者との連携:届いた書類の内容を業者に報告します。業者は、自身の対応範囲を超えていると判断した場合、提携弁護士や弁護士の紹介を提案してくれるでしょう。
  2. 弁護士事務所選び:退職代行業者から紹介された弁護士事務所、または自身で探した法律事務所に相談します。労働問題に強い弁護士を選ぶことが重要です。初回の相談は無料で行っている事務所も多いので、まずは相談してみましょう。
  3. 依頼と委任契約:弁護士に正式に依頼することを決めると、「委任契約」を結びます。これにより、弁護士があなたの代理人として会社と交渉できるようになります。この時点で、あなたは会社からの連絡に一切応じる必要がなくなります。
  4. 法的対応の開始:以降の流れは【ケースA】と同様です。弁護士が会社に対し、書面での反論や和解交渉を進め、必要に応じて法的手段に移行します。

どちらのケースにせよ、弁護士に依頼することで、会社側の不当な請求に対して法的根拠に基づいた適切な対応を取ることが可能になります。「弁護士が対応している」という事実だけで、会社が請求を諦めるケースも非常に多いのです。

追加費用発生の有無と事前に確認すべきこと

万が一の事態に備えて、依頼前に必ず確認しておくべきなのが、「損害賠償トラブル発生時の追加費用」です。特に、民間業者や労働組合を利用する場合、この点の確認は怠ってはなりません。

料金体系は、業者によって様々です。大きく以下の3パターンに分かれます。

  1. 追加費用なし:トラブル発生時も、基本料金内で対応してくれる。
  2. 追加費用あり:基本料金は退職代行のみで、交渉やトラブル対応には別途費用が発生する。
  3. 対応範囲外:追加費用以前に、そもそもトラブル対応は行わない。

特に、民間業者や労働組合の中には、②や③のケースが多く見られます。事前に「会社から損害賠償を請求された場合、追加料金は発生しますか?」と質問し、明確な回答を得ておきましょう。

弁護士運営の退職代行は、最初から法的対応を想定しているため、追加費用を含めた料金体系が明確であることが多いです。例えば、「退職代行費用〇万円(交渉込み)」「訴訟移行時は別途着手金〇万円」といった形で明示されています。

事前に確認すべきチェックリスト

  • 損害賠償請求への対応は、サービスに含まれていますか?
  • その際、追加費用はかかりますか?
  • 対応範囲外の場合、提携弁護士の紹介はありますか?

これらの質問に曖昧な答えしか返ってこない場合は、その業者への依頼は避けるべきでしょう。最初からリスクを想定し、その対策を提示してくれる業者こそが、あなたの味方となってくれる信頼できるパートナーなのです。

よくある質問(FAQ)

退職代行を利用すると、会社から損害賠償請求されるリスクはありますか?

退職代行の利用自体が原因で損害賠償を請求される可能性は、限りなくゼロに近いと言えます。日本の法律(民法第627条)では、労働者には「退職の自由」が保障されており、退職代行による意思表示は、この正当な権利行使にあたるからです。会社が「人手不足になった」「引き継ぎが不十分だ」といった理由で損害を主張しても、その因果関係を法的に証明することは非常に困難です。

退職代行を利用して会社を辞めたら、会社から訴えられませんか?

退職代行の利用のみを理由に会社から訴えられることは、まずありません。会社が労働者を訴えるには、「故意または重大な過失によって会社に損害を与えた」といった明確な法的要件を満たす必要があります。退職代行の利用はこれにあたらず、ほとんどのケースで訴訟に発展することはないのでご安心ください。ただし、在職中に会社の機密情報を漏洩したり、備品を横領したりした場合は、退職代行の利用とは関係なく訴えられるリスクがあります。

退職時に損害賠償を請求されるケースはどのようなものですか?

退職代行の利用とは無関係に、損害賠償請求に発展する可能性のあるケースは存在します。具体的には、「機密情報の持ち出し・漏洩」「会社の備品や財産の横領・破壊」「競業避止義務違反(同業他社への転職)」「重大な過失による損害発生」などが挙げられます。これらの行為は法律に反するため、退職代行業者を利用しても損害賠償のリスクは残ります。心当たりがある場合は、最初から弁護士が運営する退職代行サービスに相談することをおすすめします。

退職代行で円満退職は可能ですか?

退職代行は、基本的に会社と直接顔を合わせることなく退職を完了させるサービスであり、一般的な意味での「円満退職」とは少し異なります。しかし、会社との間に感情的な摩擦を生じさせず、事務的な手続きとして退職を完了させることが可能です。特に、会社のハラスメントや引き止めが激しい場合には、退職代行を利用することが精神的な負担を減らし、スムーズな退職を実現する最善の手段となります。代行業者に引き継ぎ書類の送付など、できる限りの協力を依頼することで、会社側も納得しやすくなるでしょう。

まとめ

会社からの「損害賠償請求」という言葉は、あなたの退職を阻むための不当な脅しであることがほとんどです。退職代行を利用したこと自体で訴えられる可能性は、法的に見ても極めて低いことがお分かりいただけたでしょう。

この記事で解説した主要なポイントを改めて振り返ります。

  • 退職代行利用による損害賠償リスクは「ほぼゼロ」です。労働者には民法で保障された退職の自由があり、会社の「人手不足」や「引き継ぎ不十分」といった主張には法的根拠がありません。
  • ただし、在職中の不法行為には注意が必要です。機密情報の持ち出しや会社の備品破壊、競業避止義務違反など、退職代行とは無関係な行為は損害賠償の対象となり得ます。
  • 会社からの連絡には自分で対応しないことが鉄則です。退職代行業者を窓口とすることで、会社からの不当なプレッシャーから完全に解放されます。
  • 運営元をしっかり選びましょう。万が一のトラブルに備えるなら、交渉権を持つ労働組合か、あらゆる法的手続きを代行できる弁護士が運営するサービスを選ぶべきです。

退職は、あなたの人生を守るための正当な選択です。今、もし会社からの脅しに怯えているなら、その不安は「知らない」ことによって引き起こされています。この記事を読んだあなたは、すでに正しい知識を得ました。もう、不当なプレッシャーに耐え続ける必要はありません。

あなたの人生は、あなた自身が選択するものです。会社からの脅しに惑わされることなく、新たな一歩を踏み出す勇気を持ちましょう。まずは信頼できる退職代行サービスに相談し、専門家の力を借りて、心穏やかな未来を手に入れてください。退職はゴールではなく、新しい人生の始まりなのです。

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